女郎ケ池

中台の太田街道沿い、現在 明糖油脂工場がある辺り一帯はその昔、水を満々とたたえた沼地であった。
今からおよそ四百年前、水戸城(城主江戸重道)が太田の城主佐竹義重に攻め落とされた時のことである。
江戸重道の妻は、侍女数人を伴って夜遅く城中を抜けだし、佐竹勢の間隙をぬって、 中台村へ逃げ延びてきた。そこには大きな沼があり、月の光は水面に映り、水はきれいに澄んでいた。
妻は、侍女たちと髪を洗いさっぱりしたところで、沼辺の若草の上に腰をおろし、 侍女たちと今までの楽しかったこと、嬉しかったことの数々を語りっていた。
話が一段落したころ、妻はすくっと立ち上がると、 「皆さん、さらば。」の声をかけ、ざぶざぶと沼の中に入っていった。 顔には微笑をうかべ、そのまま水中深く沈んでいった。 侍女たちも、沼に手を合わせ、次々と後を追った。 月の光に照らされた沼の水面には、静かな波紋がひろがっていった。
その後、村人が沼のあたりを通ると、どこからともなく若い女のすすり泣きが聞こえてくる。 その泣き声につられて沼に近づき、髪が水面に映ると、必ず沼の中に引き入れられてしまう。
沼に様々な異変が続くので、村人たちは相談し、鎮霊の大法要を行なった。 その時、十二単衣の亡霊が現われたが、やがて一筋の光とともに昇天していったという。
後に、この沼地を村人は、「女郎ケ池」と呼ぶようになった。 また、いつのころからか、この沼から獲れた鮒や鰻は、片目が白くつぶれており、 不思議なものだという話が伝わっていた。