大蛇の鱗
額田城跡(歴史民俗資料館より)------------------------------------額田神社
むかし額田にお城があったころの話。
額田城主下野守照通の家臣に、根本彦次郎という武士がいた。
彦次郎は、ある夜半、城中の用事を済まし、足軽藤蔵一人を連れて城を出ると、千石溜(沼)のほとりに出た。
すると、急になまぐさい風が吹き出し、四辺の草木が揺れ動くので不思議に思い、大木の影に身を隠して闇の中を透かして見ると、若く美しい女の姿が現われ、
彼女は城を目指して行くようでした。
彦次郎は、「これは、まさしく敵の間者が女に化けて、城内の秘密をさぐりに来たのでだろう。」と、察した。
当時、石神(東海村)の城主越前守通長と額田城主とは、従兄弟の間柄でありながら、仲が悪く開戦一歩手前の形勢を示していた。
彦次郎は、そっと女に追いすがり、女の後ろ姿めがけて抜き打ちに斬りつけた。す
すると、若い女はたちまち正体をあらわし、一丈あまりの大蛇となって、真紅の口を開き、炎のような舌を三尺ばかり出して、彦次郎を一呑みにしようとした。
その瞬間に、彼の名刀に神霊が宿り、大蛇は斬りつける名刀の下を避けてにげだした。彦次郎は、十町ばかり追いかけたが、姿を見失いもとの所へ戻り、
腰をぬかしていた藤蔵を助け、灯りを運んで見ると、地上に大きな鱗が三枚落ちていた。
翌朝見ると、大蛇の血がその辺に流れ、千石溜の水は朱に染まっていたという。大蛇の鱗を直ちに照通の見参に供えると、並びいる家臣の面々は、皆眼を丸くして驚き、彼の武勇はもちろん、照通の賞するところとなった。
三枚の鱗は、氏神の額田神社に奉納し、鎮守の宝物としたという。